この動画全盛時代に登場したTHE 写真機!俺はこんなの待ってたんだよ!
X Summitの発表動画を見ながら、FUJIFILM X-T5のWebサイトの解説文を読みながら私の頭の中に浮かんで来たのはそんな言葉、いや感情でした。
デジタルカメラが進化する過程で写真と動画の境界線が曖昧になり新機種が出るたびに少しずつ、でも確実に写真撮影よりも動画を含めた画像をキャプチャーする為の道具へとシフトしてきた様に私は思う。
高速連写、プリキャプチャーなどを駆使することによって今まで見えなかった瞬間を写し取れる様になったのはもちろん事実だし、私も素直に凄いと思う。自分の持っているカメラにそんな機能が搭載されていたら積極的に使って野鳥や蝶の飛翔なんかを撮ってみたい。
だからそんな進化の方向を否定する訳ではありません。
しかしですよ、カメラいや写真機の魅力は凄い画像を写し撮る事だけじゃないと思う。
痺れるほどカッコいいボディ、一度手にすれば剛性感と精密感に溢れる感触に頬が緩む、ダイヤルやボタン類を動かした時に指先が感じる至福、そんな風に目や指や手のひらから伝わり感情に訴えかける道具としての作り込みがとっても重要。
X-T5にはそんな写真家のエモーションを刺激するルックスや機能がてんこ盛りのカメラになってると私は感じたので、どこがどう凄いのかをこれから解説していきますね。
X-H2、X-T4とスペック比較
旧機種X-T4からどこが進化しているのか?そして同じセンサーと画像処理エンジンを積んだX-H2との違いと選ぶときのポイントは?その部分をがっつり比較して見ました。
まずは比較表をご覧下さい。
スペック | X-T5 | X-H2 | X-T4 |
---|---|---|---|
センサー | X-Trans CMOS 5 HR | X-Trans CMOS 5 HR | X-Trans CMOS 4 |
エンジン | X-Processor 5 | X-Processor 5 | X-Processor 4 |
ピクセル数 | (L)7728 x 5152(約4020万) (M)5472 x 3648(約2000万) | (L)7728 x 5152(約4020万) (M)5472 x 3648(約2000万) | (L)6240×4160(2610万) (M)4416×2944(約1300万) |
ISO感度 | ISO125~12800 拡張64〜51200 | ISO125~12800 拡張64〜51200 | ISO160~12800 拡張80〜51200 |
手振れ補正 | 5軸7段 | 5軸7段 | 5軸6.5段 |
シャッター速度 | (メカ)30秒~1/8000秒 (電子)30秒~1/180000秒 | (メカ)30秒~1/8000秒 (電子)30秒~1/180000秒 | (メカ)30秒~1/8000秒 (電子)30秒~1/32000秒 |
連写速度 | (電子)約20コマ/秒【1.29 X】 (電子)約13コマ/秒【クロップなし】 (メカ)約15コマ/秒【クロップなし】 | (電子)約20コマ/秒【1.29 X】 (電子)約13コマ/秒【クロップなし】 (メカ)約15コマ/秒【クロップなし】 | (電子)約30コマ/秒【1.25 X】 (電子)約20コマ/秒【クロップなし】 (メカ)約15コマ/秒【クロップなし】 |
被写体認識 | 顔・瞳 動物/鳥/クルマなど | 顔・瞳 動物/鳥/クルマなど | 顔・瞳 |
低輝度性能 | コントラストAF: -4.0EV 位相差AF: -7.0EV | コントラストAF: -4.0EV 位相差AF: -7.0EV | コントラストAF: -3.0EV 位相差AF: -7.0EV |
動画 | 6.2K(16:9)] 6240 x 3510 29.97p 4K(16:9)] 3840 x 2160 59.94p Full HD(16:9)] 1920 x 1080 59.94p Full HD(16:9)HS動画] 1920 x 1080 240p など | 8K(16:9)] 7680 x 4320 29.97p 6.2K(16:9)] 6240 x 3510 29.97p 4K(16:9)] 3840 x 2160 59.94p Full HD(16:9)] 1920 x 1080 59.94p Full HD(16:9)HS動画] 1920 x 1080 240p など | 4K(16:9)] 3840 x 2160 59.94p Full HD(16:9)] 1920 x 1080 59.94p Full HD(16:9)HS動画] 1920 x 1080 240p など |
液晶モニター | 3軸チルト式 約184万ドット | バリアングル式 約162万ドット | バリアングル式 約162万ドット |
撮影枚数 | エコノミーモード時: 約740枚 | エコノミーモード時: 約680枚 | エコノミーモード時: 約600枚 |
質量 | バッテリー、 メモリーカード含む: 約557g | バッテリー、 メモリーカード含む: 約660g | バッテリー、 メモリーカード含む: 約607g |
それでは比較して行きましょう。
最新の第5世代センサー&エンジンと高画素について
新機種の二台は最新の第5世代センサーとエンジンを搭載しています。ちなみに第5世代センサーにはHR(ハイレゾリューション)とHS(ハイスピード)の二種類があり、今回比較するX-H2、X-T5にはHRセンサーが積まれていて、その最大の特徴はCanonのEOS R7などに積まれる約3250万を上回る約4000万と言うAPS-Cセンサー史上最大を誇るその画素数になります。
それにしてもAPS-Cで4000万画素って一昔前までは考えられなかったような高画素センサーですが画質的に大丈夫なのでしょうか?よく高画素機は一画素の大きさが小さすぎて十分な光を受けることが出来ないので返って画質、特に高感度画質が悪くなると言われています。その点が心配ですよね。
でも一足先に発売されたX-H2で写された写真を色々見てみましたが、私の目にはネガティブな部分は感じられませんでした。
その一つの要因として裏面照射型センサーの性能向上にあるのではないかと素人なりに考えました。
裏面照射型センサーについて知らない方のために簡単に触れておくと、イメージセンサーと言うのは画素一つ一つの上に小さなレンズが乗り、その下に画像に色を付けるためのRGBいずれかのカラーセンサーがあり、更にその下に光を受けて画像信号に変える受光面とフォトダイオードがあるのですが、従来の表面照射型センサーではカラーセンサーと受光面の間に配線層があるため入射した光が若干阻害されます。
一方の裏面照射型センサーではカラーフィルター直下に受光面とフォトダイオードがあり、配線層はその下になるため入射光が十分に当たり、センサーの感度が高まります。
ただし裏面照射型はその構造上ノイズが発生しやすく、また製造工程も複雑なので当然製造コストも高くなります。
そんな良い部分と悪い部分のあった裏面照射型センサーですが、2009年ごろに実用化されてからすでに10年以上が経ち技術開発が進んだのか、ここへ来てネガな部分がほとんど無くなり光をたっぷり受けられると言う利点の性能がさらに高まった事によって高画素で高感度ノイズにも強い最強のセンサーが出てきたのだと思います。
しかし私自身は高画素否定論者程ではないものの、そこまで高画素にこだわっている訳ではありません。実際に今でもNikon D40やPentax * istDSなどの600万画素センサー機を持ち出して撮影する事もあり、その画質にも満足している。
そんな私の目から見ても最近の高画素機の画像には思わず目を見張ってしまう事が多い。100%拡大して細かい部分まで写っているのを見てスゲーなんて言う事ももちろんあるけど、それよりも豊かな階調によって空の微妙なトーンやシャドーをグラデーション豊かに表現出来るところが高画素センサーの一番素晴らしいところだと思う。
そうは言っても高画素のカメラを使うと画質は良くてもデータが重くてパソコンに負担が掛かるし、コピーや移動などもいちいち時間がかかってしまう。
そこで見てもらいたいのがピクセル数のところ。そう、Mサイズの画像でも約2000万画素と必要にして十分な画像サイズを確保しているので、日常のスナップ撮影にはMサイズを使い、風景などここぞと言う場面でLサイズを使うと言う運用も選択できると思うのだ。
もちろんパソコンのスペックとストレージ容量が許すなら、全ての撮影をLサイズで行った方がいいのは同然の事ですが。
ちょっと話が脱線しましたね、本題に戻しましょう。
常用ISO感度125・1/180000秒の電子シャッター・連写速度について
ISO125の常用感度化かも嬉しいポイントです。明るい時間帯にも絞りを開けやすくなるし、フィルターワークにも良い意味で影響を及ぼします。もちろんISO100を常用出来れば、露出の計算もしやすくなってより嬉しいけどね。
電子シャッターの1/180000秒に関しては、まあ早い残した事はないけれど今のところどんな撮影に必要なのかいまいちピンと来ていません。今までの1/32000秒でもそこまでシャッタースピードが上がった記憶はないので十分と言えば十分なので。
旧機種のX-T4の方が唯一優っているのが連写です。やはり約4000万画素の高画素では連写が遅くなるのは仕方がないですね。それでもメカシャッターの最高速は15コマ秒をキープしているのは立派だと思います。
被写体認識AFが大幅に機能アップ!
そしてX-T4と比べて一番変わった部分が被写体認識AFです。
私の使っているFUJIFILM X-E4もそうですが、今までの第4世代センサー&プロセッサーの機種では人物の顔と瞳認識しかできませんでしたが、第5世代になって一気に動物・鳥・車・バイク&自転車・飛行機・電車に対応。
我が家ではパピヨン犬とセキセイインコを飼っていて、いつも撮影に苦労しているのでこの機能は本当に羨ましいです。
ここまでは同じセンサーとプロセッサーを積んだX-H2とX-T5に性能に違いはありませんでしたが、動画に関しては X-H2が8K動画に対応しているのに対し、X-T5では6.2Kの解像度までしか対応していません。これは予想ですが、ボディの排熱の問題で筐体の小さいX-T5で8Kを撮影すると熱暴走などが起こってしまうと考えられます。まあ普通の用途では4K60Pが撮影できれば十分なので、動画に関してはどのカメラでもいいとは思いますが。もちろんガッツリ動画撮影するならボディの大きいX-H2が一番ですよ。
スチール撮影にはやっぱりチルト液晶でしょ!
お待たせしました!このX-T5最大のトピックである3軸チルト液晶のご紹介です。
横位置撮影のハイアングル・ローアングルだけでなく縦位置撮影にも対応したこの液晶方式は、先先代に当たるX-T3に採用されていましたが、X-T4では動画の撮りやすい方式であるバリアングルモニターが採用されました。
当時の富士フイルムのカメララインナップでは仕方がなかったと思いますが、現在はX-H2シリーズやX-S10など動画の撮りやすい機種が揃っているので、スチールカメラマンからの支持が厚いX-Tシリーズには3軸チルトを採用出来たのでしょう。
それだけでなくカメラの大きさも初代モデルX-T1に近い大きさまでコンパクトになり、もちろん重量も軽くなったので軽快に街をスナップできるカメラ、THE 写真機になったと言えるのです。
まとめ
他にも撮影枚数の向上や新フィルムシミュレーションのノスタルジックネガの搭載、Jpegより70%ほどデータサイズが軽くなるHEIF形式に対応するなど、さまざまな改良や新技術が搭載されたX-T5。
しかしそんな事よりも大事な事は、モードダイヤルとバリアングル液晶を搭載した機種を数多く登場させている富士フイルムは、このまま伝統のダイヤルオペレーション搭載のカメラを縮小させてしまうのか?という一抹の不安を一気に解消するカメラを出してくれた事だ。その事が私は本当に嬉しい。
願わくばこのカメラが大ヒットしてくれる事を祈っている。
そして、FUJIFILM X-E5も…
それではまた。
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