ども!あきです。
毎日の通勤や買い物、はたまた仕事の配達やレジャーなどマルチに活躍するスーパーカブ。
その信頼性の高さから長期に亘って活躍した車両がまだまだ現役でたくさん走っていますが、その中でも2007年以前のキャブレター車の場合、空気と燃料を機械的に混ぜ合わせてエンジンに供給しています。
その空気と燃料を混ぜ合わせる割合を空燃比(A/F)と言いますが、その空燃比はコンピューター制御のFI車両と違いキャブレター車両の場合は気温や高度変化の影響を大きく受けてしまいます。
だからこそ適切な空燃比の理解と管理は、エンジンの性能を最大限に引き出すための鍵となるのです。
そうは言ってもカブのエンジンはフレキシビリティーが大変高く、実際のところ一年中セッティングを変えなくても普通に走ってしまうのもまた事実。
でもそれに甘えているとエンジンには知らず知らずのうちに負荷がかかってしまい、大切なカブの寿命を縮めてしまいます。
また最近ではキャブレター車のカブにわざわざ乗る人は趣味で乗っている方がほとんどでしょう。
そうであるならば、多少の手間をかけても調子のいいエンジンでいつでも走っていたいですよね?
そこで今回の記事では気温や高度変化によって空燃比がどのように変化するかを状況に合わせて具体的に解説し、エンジンの調子を一年中快適に保つ手助けになるよう心がけて書きました。
また前回の記事では空燃比調整に関する基礎知識を体系的に解説していますので、もしまだの場合はそちらを読んでからこの記事を読むとより理解が深まると思います。
気温変化がキャブレターに与える影響
先ほども言ったようにスーパーカブに搭載されているキャブレターは、空気と燃料を適切な比率で混合する重要な役割を担い、その理想的な空燃比は14.7:1とされていますが、実際の走行では12:1から15:1程度の範囲で変動することが一般的です。
そしてこの変動には気温による変化が多分に含まれています。
空気密度の変化による影響
気温による空気密度の変化は、1度下がるごとに空気密度が0.37%ずつ減少していくと言われているので、逆に言うと気温が30度上昇すると、空気密度は約11%も増加して薄くなる事になります。
そのため同じ体積の空気をキャブレターに吸い込んでもそこに含まれる酸素の量が減るため、相対的に燃料が増えて空燃比が濃くなってしまいます。
スーパーカブの場合、最近のPGM-FIを搭載している機種では、この変化を自動で補正してエンジンに適切な燃料(混合気)を供給することが出来ますが、キャブレター車の場合は手動での調整が必要となります。
実際の数値では、気温が10℃変化すると、空燃比(A/F)は約1.0ポイント増減すると言われています。
地域特性による影響と対応
スーパーカブのキャブレターは標準では以下のようにセッティングされています。
- メインジェット:75番
- エアスクリューの基準開度:全閉から1回転半開く
- ジェットニードルのクリップ位置:5段階の真ん中(3段目)
これから各地域毎のセッテングを示しますが、実際には車両一台ごとに個性がありセッテイングも変わって来るので、こちらの設定を基準にして各自で微調整してみて下さい。
寒冷地(北海道・東北地方など)
寒冷地の冬季には気温が氷点下10℃以下になることも珍しくありません。スーパーカブの場合、標準のメインジェットでは冬季に混合気が薄くなりすぎる傾向があります。そのため、以下の調整が推奨されます。
冬季の具体的な設定値
- メインジェット:標準より1段階大きいサイズ(78番)に変更
- アイドリング回転数:やや高め
- エアスクリュー:基準位置から締め込み方向に1/4回転
温暖地(関東・関西地方など)
温暖地では、季節による気温差が30℃以上になることも一般的です。この場合、以下のような季節別調整が効果的です:
夏季(25℃以上)の設定
- メインジェット:標準サイズ(75番)
- アイドリング回転数:標準
- エアスクリュー:基準位置から開く方向に1/4回転
冬季(10℃以下)の設定
- メインジェット:標準サイズ(#75)を維持
- アイドリング回転数:やや高め
- エアスクリュー:基準位置
亜熱帯地域(沖縄など)
年間を通じて気温が高く、湿度も高い地域では、混合気が常に濃くなりやすい傾向があります。以下の調整が推奨されます:
通年の基本設定
- メインジェット:標準より1段階小さいサイズ(72番)
- アイドリング回転数:やや低め
- エアスクリュー:基準位置から開く方向に1/2回転
高地での調整
標高による空気密度の変化は、キャブレター調整において重要な要素です。標高1000mごとに約10%の空気密度低下が生じるため、高地にお住まいの方は以下のような調整が必要です。
標高1000m以上での基本調整
- メインジェット:標準より1段階小さいサイズ
- ジェットニードル位置:1段階上げる
- エアスクリュー:基準位置から開く方向に1/2回転
実践的なメンテナンス手順
季節の変わり目での基本調整
- エンジン完全暖機(水温80℃以上)
- エアスクリューを全閉から1回転半開く(基準位置)
- アイドルストップスクリューでアイドリング回転数をやや高めに調整
- エアスクリューを1/4回転ずつ調整し、最もエンジン回転が高まる位置を探る
- アイドルストップスクリューでアイドリング回転数を狙った回転数に調整(気温や高度で変化)
- 試運転を行い、加速フィーリングを確認
- 必要に応じてメインジェットサイズとジェットニードルのクリップ位置を変更
トラブルシューティングと対策
夏季の不調対策
高温時の不調は、多くの場合混合気が濃くなりすぎることが原因です。以下の対策が効果的です:
アイドリング不安定の場合
- エアスクリューを基準位置から開く方向に1/4回転ずつ調整
- アイドルストップスクリューで安定する位置を探る
- フロートチャンバー内の燃料量を確認
加速時のもたつきが発生する場合
- ジェットニードルのクリップ位置を1段階上げる
- スロージェットの清掃を実施
- エアクリーナーの点検と清掃
冬季の不調対策
低温時は混合気が薄くなる傾向があり、以下の対策を実施します
始動性が悪化した場合
- チョークの作動確認と調整
- アイドルストップスクリューで回転数を少し上げる
- エアスクリューを基準位置から締める方向に1/4回転調整
暖機後も調子が悪い場合
- キャブレター本体の分解清掃
- フロートの高さ調整(基準値:13mm)
- ニードル位置の確認と調整
定期メンテナンスのタイミング
キャブレターの調整は、気温変化に応じて定期的に行う必要があります。以下のタイミングでの点検・調整を推奨します
- 季節の変わり目(3月・6月・9月・12月)
- エンジン調子の変化を感じた時
- 定期点検時(1000km走行ごと)
上記のように季節の変わり目ごとの調整が理想ですが、実際にはそこまでしなくても、冬の初め(12月)と夏の初め(6月)の年2回実施すれば、概ねエンジンの調子を保つことが出来ると思います。
気温補正について
東北地方や北海道など、年間の気温差が40度を超えるような地域では難しいと思いますが、関東地方を中心とした温暖地の場合は、多少の出力低下を我慢すれば一つのセッティングで通年を賄うことも可能です。
以下にその考え方を記します。
- 寒い…燃料が薄くなる
- 暑い…燃料が濃くなる
- A/F …10℃で約1.0ポイント変化する
上記のポイントを踏まえて下の表を見てみると
こちらはあるスーパーカブのキャブレターを外気温約10℃時にセッティングした時の表で、赤で記した番号はメインジェットの番手になります。
このカブの場合はこの日一番調子が良くパワーが出たメインジェットは78番でした。しかしこの番手のままだと春になって気温が上がって来ると、空気の密度が下がり空燃比は濃い方向に移動します。
そして夏の最高気温35℃以上の時には、空燃比は2.5ポイントも濃い約10.0となりエンジンはゴボゴボとかぶってしまう事でしょう。
そこで重要になるのが気温補正の考え方で、今回のカブが気温10℃から30℃に上昇しても調子を崩さないセッティングを考えると、空燃比は20℃の変化で2.0ポイント上昇するため12.6から14.6に変化することになり、この表だと72番と75番の間と言うことになります。
という訳で、理想的には73か74番、その番手が準備できない場合は私なら標準の番手である75番を使うと思います。
もちろんこれは架空のセッティングになるので、この考え方を踏まえてご自身の車両に合ったキャブレターセッテングを実践してみて下さい。
まとめ
スーパーカブのキャブレターは、シンプルな構造ながら気温変化の影響を受けやすい特徴があります。しかし、地域特性や気温変化を考慮した適切な調整を行うことで、年間を通じて安定した性能を維持することができます。定期的なメンテナンスと、使用環境に応じた細やかな調整を心がけることで、スーパーカブの信頼性の高さを最大限に活かすことができるでしょう。
ただし、ここで書かせてもらった内容は私がにわか勉強した知識によるので間違っている箇所があるかも知れません。鵜呑みにはせずに他のサイトなども参考にしてみて下さい。
それではまた。
注意: キャブレターの調整は専門知識が必要です。不安な場合は、必ず専門のメカニックに相談して下さい。
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