スーパーカブのキャブが不調に|セッテイングを出す為のキャブレターの基礎知識

スーパーカブ

新車のキャブレター車がほぼ絶滅した現在、キャブ車のスーパーカブを選ぶ方は相当のマニアだとは思いますが、それでもキャブの構造や仕組みを基本から熟知している方は意外と少ないと思う。

そう言う私もキャブをセッテイングする上で重要なメインジェットの役割などは勉強したものの、全体については何となく知っている程度でこれまでやって来た。

それでもカブを走らせることは可能だがやはりエンジン性能を充分に発揮しているとは言い難いと思う。

そこで今回キャブレターについて基礎から勉強してみたので、自分の復習も兼ねて皆さんと共有したいと思います。

スーパーカブのキャブレターを基礎から理解する

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キャブレターの役割とは?

細かい解説をする前にまずはキャブレターの役割について共有しておきましょう。

そうキャブレターとは空気とガソリンの混ざった混合気を作り出し、エンジンに送り込むための装置です。それ以上でもそれ以下でもありません。

もちろん空気とガソリンをただ適当に混ぜ合わせる訳ではなく、その比率(空燃比)を適切に制御して理想的な混合気を作るのがキャブレターの仕事です。

スーパーカブのような小型バイクにおいて、キャブレターは エンジンの心臓部とも言える重要な役割を果たしています。

スーパーカブのキャブレターの基本構造

まずはスーパーカブのキャブレターの構造を簡略化して図にしてみました。

またキャブレターの形式は大きく分けるとCV型とVM型に分けられますが、今回はカブなどの4MINIに主に使われている強制開閉式のVM(バリアブル・マニホールド)型キャブレターについて解説します。

スーパーカブのキャブレターは、主に以下の主要部品で構成されています

  1. フロート室(フロートチャンバー) フロートチャンバーは、キャブレター内で燃料を一時的に保管する部分です。ここで燃料の供給が調整され、エンジンが必要とする分だけ供給されます。俗にお椀と言われる部分です。
  2. フロート フロートは、フロートチャンバー内で燃料の量を調整する部品で、上に浮く事により燃料レベルを一定に保ちます。フロートが上下することによって、燃料を供給するフロートバルブ(図では省略)の開閉が制御されます。
  3. ジェット ジェットは、燃料と空気の混合比を調整する部品です。スーパーカブの場合、主に【メイン(スロットル)ジェット】や【パイロット(スロー)ジェット】などがあり、エンジンの回転数に応じて最適な混合気を供給します。
  4. スロットルバルブ スロットルバルブはスロットルワイヤーと繋がり、アクセル操作に応じてワイヤーが引かれたり戻されたりする事で開閉し、空気の流れを調整します。スロットルが開くとベンチュリ管が拡大し(下記で解説)、空気が多く流れ込むため、それに応じて燃料の供給量も増えます。
  5. ジェットニードル スロットルバルブに直結したテーパーの付いた針の様なパーツで、スロットルバルブと共に上下する。ニードルジェットとの隙間から燃料を供給します。
  6. エアスクリュー(図では省略) エアスクリューは、エンジンのアイドリング状態や低回転時の空燃比を調整するための部品です。これを調整することで、エンジンがスムーズにアイドリングし、無駄な燃料消費を防ぎます。
  7. アイドリング(スロットルストップ)スクリュー(図では省略) スロットルバルブの開き具合を調整する物で、開ければアクセルグリップ回したのと同じ効果があり空気と燃料の両方が増えます

キャブレターの基本的な動作原理

キャブレターの動作は、ベルヌーイの定理に基づいた精巧なメカニズムによって実現されています。以下に、その詳細な動作プロセスを解説します。

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1. ベンチュリ効果の利用

ベンチュリ効果とは連続した管の一部を細くすると、そこだけ流速が増えるので、ベルヌーイの定理により、圧力が減る。この「減圧」で、別の流体を吸い込むことができる、というもの。

キャブレターの中心となるのは、正に「ベンチュリ管」と呼ばれる特殊な形状の通路で、赤矢じるしの幅を可変する事により空気や燃料をコントロールします。

ちょっと難しく書きましたが、例えばホースから出る水に蛇口を捻らずに勢いをつける為、出口を指で押さえて狭くするのもそうですし、川幅の狭い所で流れが速くなるのもそう。

レーシングカーの空力もベンチュリ効果をうまく利用しています。

2. 燃料供給の詳細メカニズム

空気の流れと燃料供給は、以下のように精密に制御されます

  • フロート室: 燃料タンクからの燃料を一定量保持します。
  • フロートバルブ: フロート(図では水色で表示)に固定され、エンジンが燃料を消費してフロート室のレベルが下がると、フロートバルブで蓋をされていた燃料供給の穴に隙間が開き、そこから燃料が供給される。そしてフロートが浮き上がると蓋が閉じる事で燃料レベルを一定に保ち、過剰な燃料供給を防ぎます。
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3. 空気と燃料の混合プロセス

キャブレターでは、異なる運転状況に応じて燃料供給を最適化します

アイドリング時

  • 低速回転時は、専用のパイロット(スロー)ジェットが少量の燃料を供給します。
  • 空気の流速が遅いため、圧力差を利用して燃料を噴射します。

低中速域

  • メインジェットとニードルが協調して、燃料量を細かく調整します。
  • ニードルの高さをクリップの位置を変える事によって調整し、燃料の噴射量を精密にコントロールします。

高速域

  • メインジェットが主役となり、大量の燃料を供給します。
  • 空気の流速が最大になり、最も大きな圧力差が生じます。

4. 混合気の形成と吸入

最終的な混合気形成は以下のように行われます:

  • 噴射された燃料は、空気の流れによって微細な粒子に分解されます。
  • これにより、燃料と空気が均一に混合され、理想的な空燃比に近づきます。
  • 形成された混合気は、エンジンのピストン運動によって燃焼室に送り込まれます。

キャブレターの基本的な動作原理

ここまで見て来たキャブレターの動作は、身近な道具である「注射器」と「霧吹き」の動作原理に例えることで、より直感的に理解できます。

注射器で理解するキャブレターの圧力と燃料供給

注射器の動作は、キャブレターの燃料供給メカニズムと驚くほど似ています。

  • シリンダー(管)の形状: 注射器の先端が細くなっているように、キャブレターにもベンチュリー管と呼ばれる細くなった部分があります。
  • 圧力差の利用: 注射器のピストンを引くと、内部の圧力が下がり液体が吸い上げられます。同様に、キャブレターでもエンジンのピストンが引かれた時に起こる空気の流れによって燃料が引き上げられます。
  • 流速と圧力: 注射器の先端が細いほど、同じ力で押すと液体の速度が上がります。キャブレターでも、空気の通路が細くなるほど流速が増し、負圧が生じます。

霧吹きで理解する燃料の微粒化

霧吹きの動作は、キャブレターにおける燃料の噴霧プロセスを説明するのに最適です。

  • 微粒化: 霧吹きで水を噴射する時、吸い上げられた液体がとても小さな穴から圧力で押し出される際大きな水滴が細かい霧に変わります。キャブレターも同じ原理で、空気の流れによって燃料を微粒化し噴射します。
  • 空気との混合: 霧吹きの霧は空気中に均一に広がります。キャブレターでも、微細な燃料粒子が中を流れる空気と均一に混ざり合います。
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これらの比喩で理解するキャブレターの動作

実際のキャブレターの動作を、注射器と霧吹きの動作に重ね合わせると

  1. 吸気段階(注射器のピストンを引く)
    • エンジンのピストン運動により、空気がキャブレター内に吸い込まれます。
    • 注射器のピストンを引くように、空気の流れがニードルジェットの隙間から燃料を引き上げます。
  2. 燃料噴射段階(霧吹きでの噴射)
    • 燃料がベンチュリー管を通過する際に、細かい粒子に分解されます。
    • 霧吹きのように、均一で細かい燃料の霧が生成されます。
  3. 混合気形成段階
    • 微細な燃料粒子が空気と均一に混ざり合います。
    • 霧吹きの霧が空気中に広がるように、燃料が空気と完全に混合され、吸気バルブより燃焼室に引き込まれます。
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最後に

ここまでキャブレターの原理について詳しく書かせていただきましたが如何だったでしょうか?

中には面倒くせ〜と思った方もいるかも知れませんが、このような知識はセッティングの迷宮にハマった時、必ずあなたの助けになると思います。

やはり理論が分かっていると悪い部分や改善箇所が分かりやすいですからね。

ただし、ここで書かせてもらった内容は私がにわか勉強した知識によるので間違っている箇所があるかも知れません。鵜呑みにはせずに他のサイトなども参考にしてみて下さい。

次回はキャブレターを理解する上で避けては通れない空燃比について解説したいと思います。この記事が役に立った方はぜひそちらも読んでみて下さい。

それではまた。


注意: キャブレターの調整は専門知識が必要です。不安な場合は、必ず専門のメカニックに相談して下さい。

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