初心者カメラストーリー【依カメラ】3.こんな写真をセレクトしました!

yori-3 初心者カメラストーリー【依カメラ】

第一話から読む

橘さんの写真セレクトが意外だった(藤木談)

どんな写真を選んでくるかなあ?

依とのランチを明日に控えた晩、藤木は自宅の部屋でそんな事を考えながら愛機のOLYMPUS OM-D E-M10を磨いていた。

実は藤木には考えがあるのだ。

もちろん依の意見が第一だけど、藤木としてはいきなり新品のカメラを買うんじゃなくて、カメラボディは自分のお下がりの中古にしてその分レンズに投資してほしいと考えてる。

そして、出来れば単焦点レンズの魅力を知ってほしいとも秘かに思っている。

新品のレンズキットを買って付属の標準ズームで写真を始めても、もちろん良いけど、まだカメラの事をよく知らない初心者のうちに足を使ってフレーミングする単焦点レンズでの撮影になれる事ができたら、上達も早いしよりカメラが好きになると思う。

まあ、全部おれの希望なんだけど・・・

藤木はカメラを磨く手を休めて苦笑した。

このカメラ、明日一応持って行ってみるか。

そして翌日のランチタイム。

前回と同じ洋食店の同じ席に向かい合って座る藤木と依。

「どう?いっぱい写真見た?」

「はい!藤木さんに教えてもらったサイトで毎晩見ましたよ~。英語苦手だから検索に苦労したけど、もう頭の中がいろんな写真でいっぱいになって、寝ててもまぶたの裏に浮かんで来るくらい見まくりました」

「でも楽しかったみたいだね。顔がちょー笑顔だし」

「はい!すごく楽しくって自分でも驚いてます。凄くきれいだったりカッコ良かったり、お姉さんがきれいで目の保養になったり、世の中には凄い写真がたくさんあるんですね!」

「それで、気に入った写真はあった?」

「色々あったんですけど、とりあえず5枚スマホに入れてきたんで見てもらえますか」

「どれどれ・・・」藤木は依からスマホを受け取ると一枚目の写真に目をやり軽く驚いた。

  • saddle

革製の自転車のサドルがいい感じに色褪せてい、スプリングの金属がギラリと光っている。藤木が見てもいい写真だと思う。でも依みたいな女子が選ぶにはちょっと渋すぎない?そんな驚きだ。

二枚目は、植物の葉の縁に沿って水滴が並ぶマクロ写真だ。ふむふむ、これは女の子が好きそうな写真だな。ギリギリまで彩度を上げたグリーンがとてもきれいだ。

次は、おっ!素敵な女性じゃん。ブルーアイズが吸い込まれるほどきれい。前回の写真もそうだけど、依ちゃん女性の趣味が良いなあ。藤木は心の中でそんな風に思いながら笑った。

その次の写真は、水たまりの中の人物の映り込みを写したぐっと渋いモノクロ写真だ。最初のサドルの写真もそうだけど、渋めのスナップ写真が好みなのかな?

最後の写真は、夕日を背景に飛ぶ大きな鳥。たぶん白鳥かな?夕焼けの色がとてもきれいで、白鳥のシルエットも美しい。駐車している車が数台写っているけど、いいアクセントになっていて、決して邪魔じゃないと思うな。うん、いい写真。

藤木は、その写真たちをもう一度一枚目からゆっくり最後まで見るとスマホから目を上げた。

「どうですか?わたしなりに選んでみたんですけど」

「すごくいいよ!正直言ってもっと女の子が好きそうなかわいい写真を選んで来るかと思ってたから、ちょっとびっくりしたけどね」

「そうなんですよね。自分でも凄く意外だったんですけど、どちらかと言うと可愛いよりかっこいいとか渋い写真に目が行ってしまうんです。もちろん、かわいい写真にも素敵なのがたくさんあったけど。でも、選ぶとなるとこんなセレクトになってしまって」

「もちろん、女の子がみんなかわいい写真が好きとは限らないからね。おれは橘さんがセレクトした写真みんな好きだよ。だから、趣味が合ってすごく嬉しいんだよね」

「ほんとですか?だったら良かったです」

藤木さん優しいからそんな風に言ってくれてるのかな?依はそんな風にも思ったが、そう思っても嬉しいことに変わりはない。うん、本当に言ってくれてると思っておこう。その方が楽しいもんね。

「それで本題ですけど、わたしにはどんなカメラが合うと思いますか?」

「うん、それなんだけどね。おれに一つ考えがあるんだ。それを今日話そうと思ってたんだけど・・・いつの間にかまた時間が・・・」

藤木はそう言いながら腕時計を指さした。

「あら、もうこんな時間だ。どうしよう」

「それでなんだけど、もし今夜空いてるなら軽く飲みながら話さない?その方がゆっくり話せるし。でも、彼氏さんに悪いかな?」

「いや、彼氏いないので大丈夫ですけど・・・」

その言葉を聞いてちょっとホッとした自分に藤木はびっくりした。いやいや、橘さんとはそういうんじゃないから。何考えてるんだ、おれは。でもいい娘だよな・・・。

「あの~」

「あっ、ごめんごめん。二人だといやかな?」

「いえ!そんな事ないですよ。逆に私と二人で良いのかなって」

「いいも何も、こうして二人でランチしてるし」

「それもそうですね」二人は顔を見合わせるとお互いに照れ笑いを浮かべた。

「そうと決まったら、まずはこれを片付けちゃいますか」

藤木はそう言うと、またしても冷めてしまったランチをほおばった。

つづく

4.カメラを譲り受けました‐前編‐→

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